Aはその振出した約束手形を不渡にし、支払銀行Yに対して不渡異議申立預託金を預託し不渡異議申立手続を委託した。
当該不渡手形の債権者であるXは、AがYに対して有する預託金返還請求権について、仮差押をした上、差押・転付命令を得た。
XがYに対して預託金の支払を請求したのに対して、YはAに対する手形買戻請求権を自働債権として相殺する旨の意思表示をして支払を拒絶した。
すなわちYはAとの間で、銀行取引約定を締結した上で、Aの依頼によって約束手形23通(金額合計3650万938円)を割り引いたが、当該銀行約定には、@「手形割引を受けた場合、私(Aを指す)が前条(5条のこと)第1項各号の一にでも該当したときは、全部の手形について・・・貴行(Yを指す)から通知催告等がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負い、直ちに弁済いたします。」(6条1項)、A「仮差押、差押もしくは競売の申請または破産、和議開始、会社整理もしくは会社更生手続開始の申立があったとき、または清算にはいったとき。」(5条1項1号)、B「期限の到来または前2条によって、貴行に対する債務を履行しなければならない場合には、その債務と私の諸預け金その他の債権とを期限のいかんにかかわらずいつでも貴行は相殺することができます。」(7条1項)と定められていた。 |