X・Yはいずれも建築工事の請負等を目的とする株式会社である。
昭和61年6月、X・YはA病院増改築工事の請負を目的として共同企業体(以下、「本件共同企業体」)を結成し、@Yを代表者とする、A損益分配の割合を各2分の1とする、B工事に要する費用は損益分配の割合に応じて負担する旨を合意した。
昭和61年8月、本件共同企業体は発注者であるBと、請負代金3億6400万円で、A病院増改築工事の一部(以下「本件工事」)につき請負契約を締結した。
昭和62年2月27日、Xは本件共同企業体から脱退した。
翌28日、Xは岐阜地方裁判所に対し和議開始の申立をし、Yはその直後にその事実を知った。
岐阜地方裁判所は、同年7月14日、Xにつき和議開始決定をした。
Xの脱退前の同年2月20日過ぎ頃、X・Yは、施工中であった本件工事の請負代金の精算に付き、YがBから同月28日時点での出来高に相当する請負代金を受領したときに、その2分の1をXに対し支払う旨合意していた。
同日時点での本件工事の出来高は62、72%であり、同年4月28日までに、YはBから上記出来高に相当する請負代金として、1億762万余円の支払を受けた。
他方、本件共同企業体は、上記出来高に対応する費用として下請業者等に対して計2043万余円の債務を負担しており、Yは自己負担分である上記債務の2分の1相当額を弁済したほか、昭和61年12月から昭和63年3月までの間に、924万余円を弁済した。
本件訴訟は、Xが、同年2月28日時点の本件工事の出来高に対する請負代金の未払分(3426万余円)及びその遅延損害金を請求するものである。
これに対しYは抗弁として、@Xに対する貸金債権(3000万円)、A下請業者に対する弁済によるXに対する求償権(924万余円)を自働債権とする相殺を主張している。
原審はYの抗弁のうち@については全部を認めたが、Aについては、本件共同企業体は商行為を目的とする組合であり、本件共同企業体が下請業者等に対して負担した債務は各構成員の連帯債務となるため、YはXに対し弁済額の2分の1の求償権を取得したと認められるが、当該求償権のうちYがXの和議開始の申立を知った後に弁済したことにより取得した分については、和議法5条が準用する破産法104条4号(現行破産法71条1項4号・2項)により相殺は許されないと述べて、6万余円の限度でしか認めなかった。
これに対してYが上告した。 |