Y株式会社の取締役は代表取締役Xのほか、A・B・Cの4名であったが、XとAとの間で支配権争いが生じた。
定款所定の任期満了前に、「Xが取締役及び代表取締役を辞任し、その後任取締役にDが就任し、代表取締役にAが就任した」旨の登記がなされた。
しかし、実際には、Xが辞任した事実も、Dを取締役に選任する旨を決議した株主総会及びAを代表取締役に選任する旨を決議した取締役会が開かれた事実もなかった。
そこでXは、Y社を被告として、XがY社の取締役及び代表取締役の地位にあることの確認、Aが代表取締役の地位にないことの確認、上記各決議の不存在の確認等を求める訴えを提起した。
第1審は、Xの請求を全て認容し、Y社は控訴した。
第1審判決後もY社の商業登記簿上の取締役は逐次選任されており、最終的に代表取締役Aのほか、B・Dが取締役として表示されていたが、A及びBは、控訴審においてもXの主張が認められた場合に備えて、Xに対し、Xの主張どおりX・A・B・Cの4名が取締役であるという前提で、Xの代表取締役解任及び新代表取締役選任を議題とする取締役会の招集を請求した。
Xはこれに応じてA及びBに対し取締役会招集通知をなし、X・A・Bが参集して開催された取締役会において、Xを代表取締役から解任し、Aを代表取締役に選任する旨の決議がなされた。
この取締役会の決議をふまえてY社は、原審において、仮にXの主張が正しいとしても、新たな取締役会の決議によりXの請求のうち、少なくとも、XがY社の代表取締役の地位にあることの確認及びAが代表取締役の地位にないことの確認を求める請求は理由がないことになったと主張した。
しかし原審は、当時の取締役は商業登記簿上に記載されたA・B・Cであり、Xの辞任登記前の取締役会の構成による取締役会を招集してみたところで、このような会議はY社の取締役会とはいえないとして、Y社の予備的主張が排斥し、控訴棄却。
これに対しY社上告。
上告理由は、Xが代表取締役の地位にあることの確認請求を認容しながら、他方で登記簿上の取締役であるA・B・Cの3名が取締役であるのは矛盾しているというものである。 |