本件は、X合名会社とYとの間でなされた不動産賃料請求訴訟である。
Yは以下のような事情のもとで、X社の代表社員として訴訟を追行しているAの代表権限を争っている。
すなわち、本件訴訟とは別に、Aは同じくX社の社員であったBのX社代表社員資格を争う訴訟を提起し、昭和33年8月22日Bの職務執行を停止し、代行者を選任する旨の仮処分を得ている。
さらに、昭和33年11月19日と昭和34年3月20日の2回にわたり、Bに対する各8万5000円の扶養料請求債権をもってBのX社に対する持分を差押さえ、前商法91条1項所定の退社予告を行なった。
AはBがこの退社予告により当該営業年度の終わりである昭和34年12月31日にX会社を退社させられ社員資格を喪失したとし、その旨の登記申請をしており、X社の商業登記簿には、Bが12月31日社員資格を喪失し、Aが昭和35年2月23日代表社員に就任した旨の記載がある。
これに対して、Yは、次のように主張している。
Bは昭和33年12月12日及び昭和34年12月28日、前商法91条2項所定の担保として17万1000円を名古屋法務局に供託したが、Aのした退社予告は効力を失っており、Bは依然としてX社の社員である。
したがって、Bの同意なくなされたAの代表取締役就任は無効である。
原審においてX社の請求が認められたため、Yが上告。 |