Xは、Y株式会社の発行済株式数の約5分の1を有する個人株主である。
Xは、Y社創設以来その取締役でもあったが、昭和40年の定時株主総会では取締役として再任されなかった。
そこで、Xが本件株主総会決議の取り消しを求め、複数の法令・定款違反を根拠に提訴した。
第1審はXの請求を認容したが、Y社控訴。
控訴審でY社は、本件株主総会後に、任期満了による役員改選のための株主総会が開催され、新たに適法な役員改選が行われたため、本件訴訟の訴えの利益がないと主張した。
控訴審はY社の主張に対し、形成の訴えは、その出訴要件が具備している限り訴えの利益が認められるのが原則であるものの、形成権発生後の事情の変動により、判決しても何ら具体的実益のない場合には訴えの利益を欠くに至るところ、役員の改選によりXが取り消しを求める選任決議に基づく役員が現存しないことから訴えの利益を欠くに至ったものとして、第1審を変更してXの請求を却下。
これに対してXが上告した。
Xの上告理由では、取締役選任決議の取り消しを求める利益はその地位を喪失させることに加え、会社が受けた損害を回復させるための前提として取締役ではなかったことを確定することにあるところ、後者の利益については失われないと主張している。 |