Xは、A(株式会社東辰)に対し賃料等558万余円を支払うため、B銀行甲支店に振込みを依頼した。
ところが、Xは、誤ってXとの間に何ら債権債務関係のないB銀行乙支店のC(株式会社透信)の普通預金口座に振込んでしまった。
誤振込が行なわれた理由は、AもCもXの管理簿上「カ)トウシン」と同一の表記がなされていたためである。
その結果、Cの普通預金口座に上記金額の入金記載がなされたのである。
3ヵ月後、Cの債権者であるYがCのBに対する普通預金債権を差押さえた。
そこでXは、口座残高のうち自らほ振込みによる558万余円分については権利があるとして、Yの差押に対し第三者異議の訴えを提起した。
第1審、2審ともX勝訴。
原審は、振込金による預金債権が有効に成立するためには、受取人と振込依頼人との間において当該振込金を受取りための正当な原因関係の存在を必要とするところ、本件は原因関係のない誤振込であるから、CのBに対する預金債権は成立していない。
そして、当該振込金の金銭価値の実質的帰属者はXであるから、Xは第三者異議の訴えによりYの差押の排除を求めることができる。
Yは上告した。 |