Xは、Y銀行に対しA銀行甲支店のB名義の預金口座に500万円の振込を依頼したが、申込用紙に口座番号を記載しなかった。
Yは、口座番号の指定がないまま直ちにA銀行甲支店に対しテレファックスで送金の通知をした。
同支店には、B名義の預金口座はなかったが、C株式会社(代表取締役B)名義の当座預金口座とD組合組合長B名義の当座預金口座があった。
同支店は、Yを通じてXにその指定を求めないでB本人に照会し、その支持に従ってC名義の口座番号23108番の口座に500万円を入金した。
Xはまた、Yに対しA銀行甲支店のB名義の預金口座に200万円の振込を依頼したが、口座番号の指定をしなかった。
Yは口座番号の指定がないまま直ちに甲支店に対し送金の通知をしたが、口座番号の指定がないため送金できなかった。
甲支店がXにその指定を求めたところ、Xは口座番号を21041番と指定したが、指定された預金口座は存在しなかった。
そこで、甲支店は再びXに照会し、XはE事業団代表者B名義の預金口座、口座番号21041番に変更した。
ところがそのような預金口座も存在せず、甲支店はBに照会したところ、口座番号21041番、預金口座名義人D組合(代表者組合長B)の口座に入金するよう指示したので、Yはそれに従った。
Xは、Yに対し、振込依頼どおりの振込が行なわれなかったとして振込契約を解除し、振込金の返還を求めたのが本件である。
第1審(松山地判昭和63・10・28金法1258号68頁)は、受取人として指定された者の支配する口座に入金されたときは、指定以外の口座に振込まれたのでは目的を達成することができない特段の事情のない限り、その契約は目的をすでに達しているとして、Xの請求を棄却した。
Xは控訴した。
原判決(高松高判平成元・10・18金法1258号64頁)は、受任者としては委任者の意思により送金先の指定の補充ないし変更を受けた上で送金手続をすべきであり、それでもなお指定の預金口座が無いときは、送金先記載文言の趣旨、口座番号などから送金先に関する委任者の意思を解釈して特定できればこれに従って履行すべきでありまたそれで足り、それでも特定できないときは履行が不能であるとして委任契約を解消し委任者に預った金員を返還すべきであるとし、500万円の振込以来についてはB名義の預金口座に送金依頼する旨のXの意思に反し別人であるCに送金したものであり、契約の本旨に従った履行とはいえないとした。
これに対し、200万円の振込依頼については、甲支店が入金したのはD組合組合長Bの預金口座であるが、Dは権利能力のない社団であり、その預金は法的にはB個人の預金口座にすぎず、当該口座への入金は契約の本旨に従った履行であると認めた。
Yは上告した。 |