東京証券取引所一部上場のX1株式会社では、昭和47年、時価発行公募増資により30億円の資金を調達する計画を立てた。
そこで、X1社の副社長X2及び経理部長X3は、証券会社X4ないしX8の5名と共謀して、株価を権利落ちまでに280円までつり上げて公募価格を200円とする増資を実現するために、A社の資金等により、東京証券取引所第一部市場において、買い上がり買い付け、買い支え等の方法により、2ヶ月間に、X1社株合計614万9000株を継続して買い付け、さらに合計10万4000株につき仮装の売買をするなどして市場操作を行なった(変動操作)。
この結果、当時1株170円ないし180円台であったX1社の株価は、権利落ちまでに256円まで引き上げられ、権利落ち当日には220円となった。
さらに、X3及びX4はX5らと共謀して、引き続き買い付けを行なって市場におけるA社の株価が下落を防ぎ、少なくとも1株220円程度の範囲に維持するため、東京証券取引所第一部市場において、X1社及び系列会社の資金により、買値以下の売り注文を買いさらうなどの方法により、約1ヶ月間に、X1社株式合計86万6000株を継続して買い付ける一連の売買取引を行った(安定操作)。
これらの行為が、証券取引法125条(現行159条)2項1号に違反する相場操縦(変動操作)、同錠3項に違反する安定操作に該当し、かつ商法210条に違反する自己株式の取得に当るとして、X1社及びX2ないしX8が刑事訴追された。
第1審判決は、変動操作罪、安定操作罪、及び自己株式不正取得罪の成立を認め、X1社に罰金30万円、X2ないしX8に懲役1年6ヶ月(執行猶予3年)から懲役8月(執行猶予2年)の有罪判決を言渡した。
一部被告人が控訴したところ、控訴が棄却されたので(ただし、証券取引法違反についてのX1社の責任は否定)、憲法違反等を理由に上告がされた。 |