Xは、大手証券会社の株主であるが、Y社の株主総会がいわゆる集中開催日に開催され、これに出席できないことから、株主総会への出席を弁護士に委任し、その旨Y社に申し出たところ、Y社は定款において株主以外の者の株主総会への代理出席を認めていないことを根拠に、Xの申出を拒絶した。
そこでXは、@議決権行使の代理人資格を株主に限る旨のY社定款の規定は、商法上株主に認められた議決権代理行使の権利を不当に制限するものであって無効であるとし、仮に代理人資格を株主に限ることが認められるとしても、無限定にこれに限ることは商法に違背するため、少なくとも弁護士等の専門家や株主の親族等には代理人資格を肯定すべきである、A仮に定款規定が有効であるとしても、代理人は弁護士であり総会を攪乱するおそれはないため、本件で議決権行使を拒絶したことは違法である、と主張し、Y社に対して、本件株主総会において株主権行使の機会を奪われたことによる精神的損害について損害賠償を請求し、本件訴訟を提起した。
これに対しY社は、主張@に対しては、議決権行使の代理人資格を株主に制限する旨の定款規定は、それが有効である旨の確立した判例に副うものであり実務上も確立していることに加え、第三者が株主から委任状を集めて株主総会に臨み、株主総会を攪乱させるおそれがあり、このような事態を防止すべき要請は強いから有効であるし、専門家や親族に議決権の代理行使を認めるべきというならばまず定款の変更を求めるべきであるとの主張をした。
主張Aに対しては、議決権の代理行使を制限できる合理的な理由としては、X主張の株主総会の攪乱の恐れ以外にも、株主総会が株主のみによって運営されるべきという理由があることに加え、書面投票制度が存在するので議決権の行使は妨げられないこと及び受付の場における事務処理の混乱を回避すべきことを理由に、申出を拒絶したことは適法だと主張した。 |