X社は、ショッピングセンター等の経営を目的とする株式会社であり、平成元年2月末日現在のXの資本金は1億6700万円、その有する資産の価額は合計47億8640万円余、その有するA社株式(額面50円)12万1000株(以下、「本件株式」)の帳簿価額は7800万円であり、A社の発行済み株式の7、5%に当る。
A社は、茶の製造販売を営む株式会社で、昭和63年及び平成元年に株主に対し、額面50円に対し1割に相当する金額の利益配当をした。
A社は、X社の発行済み株式の17、86%を有しているが、X社との間に商品の取引はなく、X社は、A社の株主総会に出席したことはない。
X社は、もともとB家によって設立され支配されてきたものであるが、B家と代表取締役Cとの間で内紛が生じ、平成元年9月19日にB家の親戚に当りA社の代表取締役でもあるDがX社の取締役及び代表取締役に選任され、Cは同年12月1日、代表取締役を解任された。
その後、B家とCらとの間で和解が成立し、平成2年1月19日、Dは代表取締役を解任され、Cが再びX社の代表取締役に選任された。
これより1日前の平成2年1月18日、X社代表取締役Dは、Yに対し、X社の有する本件株式を代金7986万円で譲渡した。
本件株式の譲渡については、Xの取締役会の承認決議はされていない。
なお、X社の取締役会において、昭和63年6月15日、X社の有する他の会社の株式を譲渡することを承認する旨の決議がされたことがある。
X社は、本件株式の譲渡の無効を前提として、Yに対し、X社が本件株式の株主であることの確認を求める訴えを提起した。
第1審判決は、X社の請求を棄却した。
X社が控訴し、控訴審において、本件株式はX社にとって前商法260条2項1号の「重要なる財産」に該当するのに、本件株式譲渡はX社の取締役会の承認を経ていないから無効であるなどと主張した。
控訴審判決は、本件株式はX社にとって価格的には相当な財産であるが、X社は、本件株式によってAから配当を受領していただけあって、X社の営業を維持発展させるためにどうしても保有しなければならない財産であるとまで認めることはできず、本件株式を売却してもその代価を取得できることや本件株式の帳簿価格とX社の資産額との対比などをあわせ考えると、本件株式譲渡をもって前商法260条2項1号の「重要なる財産の処分」ということはできないとした。
X社は上告した。 |