Xは、昭和25年にA社に対し合計130万円を貸し付けた。
ところが、翌昭和26年になって、A社はB社・C社とともに、その営業を廃止し、新たにY株式会社を設立して、旧3会社の営業をY社に譲渡した。
Y社は業務の開始に当たり、旧3会社の取引先に宛て「御挨拶」と題する書面を送付した。
書面は、3会社は小異を捨て大同に就き新たにY社を創立し新社名の下に業務を開始することになった、ついては迅速適確な仕切金送付支払をモットーとして荷主の期待に副うよう努力する旨が記述され、さらに旧3会社の従来の売上実績を数字を挙げて示した後、「以上所信の一端を申し述べましてご挨拶に代える次第であります」と結ばれていた。
Xは、A社のXに対するか資金債務をY社から引き受けている旨を主張し、Y社に返還を請求した。
特に控訴審において、Xは予備的に、たとえAY間で債務引受がなされていなかったとしても、上記の「御挨拶」と題する書面は、Y社がA・B・C3社の業務を継承したことを記載して広告したものであり、前商法28条にいう債務引受の広告に当り、Y社には貸金を弁済する義務がある、と主張した。
第1審ではXが勝訴したが、控訴審では、主位的請求である債務引受の事実は認められず、予備的請求についても次のように指摘され、棄却された。
すなわち、上記書面が取引先に対する単なる挨拶状であり、不特定多数人になされたいわゆる広告ではなく、また挨拶状の中には「新会社に業務を継承した3社の実績云々」の文言があるが、これは旧3会社が整理されて営業を廃止し、新たにY社が設立されて旧3会社と同一の業務を開始する趣旨であって債務引受の趣旨とは解されない、とされた。
Xは上告した。 |