Yは、振出人を「甲製作所代表乙」、受取人を自らが代表者であるA有限会社として、約束手形4通を振り出した。
本件手形は、AからXらに対し商品取引代金の支払または手形割引のためい裏書交付されたが、その際Yは、Aが振出人から商取引の代金決済のためにこれを取得したものである旨説明し、Xらも振出人と受取人とは別人であると考えて本件手形を取得した。
ところで、「甲製作所代表乙」とは架空人の名称であった。
Yが本件手形の振出人として上のような名称を使用したのは、受取人として記載されたAが、Xらに本件手形を裏書する際、第三者振出しのいわゆる商業手形であるかのように見せかけて、その信用を高めるためであった。
Xらは、Yに対し、次のように主張して手形金の支払を求める訴えを提起した。
第1に、振出人乙の名称はYの別名であるから、Yは振出人としての責任を負うべきである。
第2に、Yは架空人名義で手形を振出したものであるから、手形法8条に準じて、手形振出人の責任を負うべきである。
第1審、原審ともXの請求を認容したが、原審の理由は手形法8条の類推適用によるものであった。
Yは上告した。 |