Yはフランチャイズ事業を展開する株式会社である。
Xは某メーカー企業の元開発部長で、同社を希望退職後、約2年間にわたり友人と事業を行なった経験を有する者であるが、独立して事業を経営する機会を窺っていたところ、Yの運営するフランチャイズの説明を受け、Yのフランチャイザーとして開業することを希望するに至った。
平成6年11月、XとYの担当者は店舗候補地をいくつか視察した上、A地にある賃貸物件が適当であるとして開業準備に着手した。
Yは売上見込等を付した新規出店事業計画を作成し、Xはこれを資料として国民金融公庫に融資の申込をしたが、立地条件が悪いこと、Xが事業の素人であること等を理由として、融資を拒絶された。
このためXの開業は一旦頓挫したが、リース会社であるB株式会社からから資金を調達できることとなり、平成7年2月、前記賃貸物件を賃借し、Yとの間で加盟店契約(以下、「本件契約」)を締結した。
同年3月、Xは本件契約に基づきクリーニング店(以下、「A店」)を開店したが、開店当初から売上はYの示した損益分岐点におよそ到達しなかった。
Yは人員を派遣して業務改善を指導する等したが、業績は改善せず、同年10月、Xは本件契約を解除する旨の意思表示をし、A店は同年12月に閉店した。
以上のような事実関係のもと、Xは、売上予測等を示す場合、Yには適正な情報を提供すべき信義則上の保護義務があるにもかかわらずこれを怠ったとして、Yに対し損害賠償を請求した。
原審は、売上等の予測には様々な手法が考えられ、架空の数値に基づくものであるとか、推計の過程に明らかに不合理な点があるというのでない限りは、相手方の判断を誤らせるよな適正を欠く予測を呈示したものということはできず、本件における売上等の予測は、客観的な統計資料に基づく人口動態やクリーニングに関する千葉県民の消費動向を根拠に算出された需要予測に裏付けられたものであり、特に適正を欠くところはなく、また予測が現実に達成できるか否かの判断はフランチャイズ契約を締結して加盟店になろうとするXが自己の責任において行なうべきであるとして、Xの請求を退けた。
これに対し、Xが控訴したのが本件である。 |