貴金属の販売・加工業を営むX株式会社は、顧客等から請け負った宝石の加工をAに下請させ、この宝石をAに送付した。
加工を終えたAは、この宝石をXに送り返すため、Y株式会社の宅配便を利用し、自己を荷送人、Xを荷受人とする運送契約をYと締結した。
Yが標準宅配便契約約款に従って定めた本件約款においては、運送人が荷物の運送を引き受ける時に、送り状を荷物一個ごとに発行し、これに荷送人はその氏名、荷物の品名及び価格等を、運送人は運賃のほか、損害賠償の額の上限である責任限度額等をそれぞれ記載するものとされていた。
また、Yは責任限度額を30万円と定め、送り状の用紙に、価格の記入を求める旨及び30万円を超える品物は引き受けず、仮に出荷しても損害賠償責任を負わない旨を印刷し、また、宝石類等は引受を拒絶することがある旨を定めていた。
しかし、Aは、送り状の依頼主欄及び届け先欄には所定の事項を記入したが、品名欄及び価格欄には記入しなかった。
XとAの間では、互いに宝石を送付するのに宅配便を使用しており、XはAが本件荷物をYの宅配便を利用して送付することを予め容認していた。
運送中に本件荷物が紛失され(Yに重過失はない)、Xは加工を注文した宝石の各所有者に合計394万1900円を賠償し、これにより各所有者のYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権を取得したことなどを理由としてYに対し損害賠償を求めて本件訴えを提起した。
原審判決は、責任限度額の範囲内でしかYの責任を認めなかった。
Xは上告した。 |