Y1社及びY2社は、いずれも東京証券取引所第1部に上場する株式会社である。
X社は、昭和62年10月頃からY1社の株式を、また昭和63年2月頃からY2社の株式を大量に取得し始めた。
Y1社の東京証券取引所における株価は、昭和62年12月頃までは900円ないし1200円前後で推移していたが、昭和63年1月以降急騰し、同年2月から5月頃までには4000円前後となり、さらに同年8月には8000円まで上昇した。
その後は、おおむね4800円ないし6000円程度で推移している。
Y2社の東京証券取引所における株価は、昭和62年1月以降急騰し、同年2月から5月頃までには2000円前後となり、同年8月には5460円まで上昇した。
その後は、同年9月にいったん3200円まで下落して以降、おおむね3650円ないし5000円程度の価格で推移している。
X社は、昭和63年6月から10月にかけてY1社と、同年10月から11月にかけてY2社と会談し、Y1社、Y2社及びA社の三社合併等を提案したが、Y1社及びY2社はこれを拒否した。
その後Y1社、Y2社は、X社の要求に対抗するため、業務提携の交渉を開始し、平成元年7月8日、業務提携及び資本提携の合意を行った。
これに基づき同月10日、Y1社及びY2社それぞれの取締役会において、Y1社はY2社に対し、Y2社はY1社に対して新株を割り当てる新株発行を決議した。
その発行価額は、市場価額が極めて高騰していたことを理由に、これを基礎とせず、他の株式価格算定方式を用いて、Y1社は1株1120円、Y2社は1株1580円とした。
これに対してX社は、本件Y1社及びY2社による新株発行の差止仮処分を申請した。
その理由は、大別して以下の2点である。
第1に、本件Y1社及びY2社による新株発行は、特に有利なる発行価額に該当するものであるにもかかわらず、株主総会特別決議がなされていない。
これは、前商法280条の2第2項に違反する。
第2に、Y1社の新株発行により、X社の持株比率は33、34%から26、81%に低下し、またY2社の新株発行により、X社のそれは21、44%から17、24%に低下する。
これは、X社の持株比率を低下させ、現経営陣の支配権を維持する目的でされるものであるから、著しく不公正な方法による新株発行である。 |