昭和48年、A株式会社はB会社から豚肉を買い受け輸入した。
A・B間の売買契約では、Aが売買代金を決済した上で豚肉につき発行された船荷証券の取得により豚肉の所有権を取得することとされていたが、Aは代金を支払うことができず、船荷証券を取得することができなかった。
しかし、Aは豚肉の海上運送人であったY会社に懇請し、船荷証券取得前のの保証渡しいより豚肉の引渡しを受けた。
Yはこの引渡しの責任を問われ、Bに代金相当額を支払い、船荷証券を回収した。
豚肉の通関手続き中、Aは豚肉をC株式会社に寄託した(Cの倉庫は保税上屋でもある)。
豚肉が日本に到着する前にAは豚肉をD有限会社に売り渡し、DはこれをX株式会社に転売していた。
A及びDは、豚肉を引き渡す手段として、それぞれ受寄者であるC宛てに豚肉を買受人に引き渡すことを依頼する旨を記載した荷渡指図書を撤回する旨の赤字の荷渡指図書を発行し交付した。
また、AはYの要求により、Cに対し豚肉をYに引き渡すよう指図した荷渡指図書に対して何らの措置もとらなかった。
本件豚肉につき、YはA及びCに対する動産仮処分を申請し、執行官保管の仮処分が執行された。
その後、XはAに代わって関税を納付し、X、Y、Cの合意により本件豚肉は換価され、この換価代金からXが関税として納付した額を控除した残額約1713万円が定期預金とされた。
Xが豚肉の換価代金につき所有権を有することの確認を求めて訴えを提起した。
原審判決では、下記の慣行等からすれば、寄託者台帳上の寄託者名義の変更により、Xは豚肉の占有をDのCに対する指図により取得したといえるのであり、このような占有移転により、民法192条に該当する占有を取得したということができるとされ、Yの控訴が棄却された。
Yは上告した。 |